支配層の住居は、平安時代に成立した「寝殿づくり」で、これは、中国の宮殿建築を模倣したものといわれ、寝殿とよばれる正殿のほかに、東、西あるいは北に対屋という別棟の建物をもうけて、それらを渡殿という廊下で連結した、いわば連鎖状の形のものである。そのばあい、個々のへやにあたる寝殿や対屋(たいのや)は、母屋を中心に、そのまわりをとりまく庇(ひさし)という「縁側」からなる同心円的平面構造をもち、母屋と庇とのあいだにしきりはなく、しきりがあるのは、庇と外部とのあいだの蔀戸や妻戸(開戸)などである。
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そうすると、これらは一室一棟の建物、すなわち「一室住居」ということになる。そこでこの建物を大きくしようとおもっても、「同心円構造」という空間の性格から、かぎりがでてくるのだ。要するに、寝殿づくりというのは、日本古来の一室一棟の建物であるミヤ=神社建築を、中国風に庭をとりまくように左右対称にはりめぐらした、とかんがえることのできるものであるから、個々の神社建築がそれ以上に大きくなりえないのと同様に、寝殿づくりのそれぞれの寝殿や対屋も、あまり大きくすることはできないのだ。