二〇一〇年八月二八日に発売された「キンドル3」では、日本語のフォントが搭載され、日本語表示ができるようになった。新しいキンドルは、画面の大きさはキンドル2と同じだが、装置全体の大きさを二I%小さくし、薄くもした。重さもキンドル2は約二九〇グラムだったが、約二四七グラムと軽くなり、より容易に片手で持てるようになった。コントラストも五〇パーセント向上して、戸外でも読みやすくなった。ページ送りのときに黒く反転し、読書がとぎれてしまうという欠点があったが、ページ送りも二〇パーセント早くした。また、これまでの倍の三五〇〇冊の電子書籍が保存でき、電池の持ちも良くなり、通信接続を切った状態ならば1ヵ月持つようになった。値段は、先に書いたとおり家庭内の無線LANなどに接続してダウンロードする機能のみのものは一三九ドル、携帯ネットワークに無料で接続できるタイプのものは一八九ドル。日本語表示できるようになったものの、この原稿を書いている時点では、購入はこれまでどおり米アマゾンのサイトからのみだ。日本語の電子書籍の販売もしていない。電子書籍の小売価格をアマゾンと出版社のどちらがつけるかについて折り合いかつかないのだろう。今後、一部の出版社の本だけでもアマゾン側か価格をつけて販売するということが起これは、のちのち大きな意味を持つようになるかもしれない。定価販売の「壁」に穴があき、最初はじわじわとかもしれないが、やがては水がどっとあふれ出し、本の価格破壊が起きる可能性がある。また大手出版社などがアマゾンでの電子書籍の販売に二の足を踏むなか、アメリカでやつているようなセルフーパブリッシングまでアマゾンが始めれば、そうした方向のものが増えていき、出版のあり方が大きく変わっていくことも考えられる。条件が整わないのに日本語表示をできるようにしたのは、中国語、韓国語、ロシア語などとともにバージョンーアップのついでにできるようにしたにすぎないのかもしれないが、すでに書いたように、日本でもiPadに続いてソニーやシャープから読みやすい端末が発売されることが発表され、アマゾンは、日本語表示できるキンドルを出さないわけにはいかなくなっていた。また、電子出版の国際組織「国際デジタル出版フォーラム(IDPF)」が策定したオープンなフォーマットEPUBは、先に書いたとおりアップルや、グーグルーエディション、あるいはソニー・リーダーなど英語圏では広く採用され始めている。しかしアマゾンは、AZWという独白フォーマットを使っている。EPUBの日本語対応が可能になれば、日本でもEPUBが広がる可能性がある。もっとも売れる電子書籍のフォーマットがタイトルを集められやすいのは明らかで、アマゾンとしては、日本でEPUBが広がるまえにシェアを獲得しておきたいはずだ。アマゾンにかぎらず、独自フォーマットを採用しているところは、EPUBの日本語対応がなされるまでの時間的猶予を活かしたいにちがいない。もっとも出版社のほうは、いろいろなフォーマットの電子書籍を準備しなければならないのであれば厄介だ。総務省・文部科学省・経済産業省の三省によって開かれた「デジタルーネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」は、二〇一〇年六月、日本で広く使われているシャープのXMDFとボイジャーのドットブックが協調し、さまざまな端末やプラットフォームのフォーマットへの変換をたやすくできる中間フォーマ″卜策定に取り組むことを報告書のなかで明らかにしている。
[参考情報]
デジタルカタログについて