企業間競争により価格が下落

2011-05-02

Chapterlで触れたように、この10年余りの問、印刷業界の売上げは減少し続けている。要因の一つは、印刷会社間の競争が激しくなったことによる価格の引下げである。かつて、印刷業界は受発注関係が固定的であったことから、企業間競争はさほど見られなかった。しかしながら、近年のデジタル化の進行がこの構図を変えることになった。業者間の過当競争に対して、多くの印刷会社が価格の切り下げという方法で対応した。しかも、競争の中で他社に勝つには、いったん下げた価格を上げることは容易ではないことから、売上げ減少に歯止めをかけられない状況が続いているのである。DTPの進歩でプリプレスの付加価値が低下もう一つの要因は、DTPの技術進歩による付加価値の低下である。この十数年で印刷の前工程(プリプレス)のDTP化か進んだことで、印刷業の構造も変化を余儀なくされた。DTP化か進む前は、文字の組版や製版は印刷会社の仕事であった。しかし、DTPであれば、レイアウトやデザインがパソコンで簡単にできるようになり、デジタルカメラの普及によって、写真の取り込みも容易になった。こうして出来上がったデータが、印刷会社に入稿されるのが一般的になってきている。顧客側とすれば、自前の作業で完成したデータを納品するのだがら、組版代や製版代の分は価格を引き下げられるだろうと、印刷会社に要求することとなる。つまり、デジタル化によって、アナログ時代には印刷会社の付加価値=利益の源となっていた版下代や製版代、集版代などの売上げが立たなくなっているのが実情なのである。こうして、印刷会社固有の領域が年々減少していくことで、合理化によるメリットを上回る受注額の減少をもたらし、印刷産業のマーケットを縮小させるという結果になっているのである。実際に、印刷代の価格低下という要因と比べたときにも、デジタル化によるプリプレス加工賃の低下が無視できない状況になってきていることが、データにも現れている。少し前のデータになるが、印刷技術協会の試算では、デジタル化によるプリプレス加工賃の売上減少は1997〜2002年で2・9兆円に上り、同じ時期に印刷代の価格低下によって減少した1・4兆円の2倍にもなっているのだ。一方で、デジタル化は、生産機中心から、すべての作業情報と取引情報を一元管理するフルデジタルワークフローに進みつつある。これは、印刷会社が顧客の多様なデジタルコンテンツにかかわり、その運用・提案を行うことで顧客の収益向上に貢献し得る状況を生み出しているということである。マ−ケットの縮小という現実を受け止める一方で、ただ現状に手をこまねいているだけではなく、利益を生み出せるビジネスモデルの確立へと姿勢を転換していくことこそ、印刷会社にとって重要になっているのである。

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